NOVILOG

株式会社ノヴィータが運営するブログメディアです。メンバーのこと、文化や価値観、ノウハウ、様々な活動などについて発信します。

リモートワーク前提の組織における社内コミュニケーション設計のあるべき

顧問の齋藤です。

Web/ITディレクション歴20年で、普段は会長や社長の経営上のお悩み整理と伴走、メンバーの業務相談など、社内全体において総合的に相談に乗り、課題の解決に向けてサポートをしています。それ以外では、リーダークラスのマネジメント研修や、NOVILOGのマネジメントなどにも携わっています。

コロナ禍以降、リモートワークという働き方が以前より浸透し、場合によりリモートワークが前提となる企業が増えてきており、「社内コミュニケーションのあるべき」にも大きな変化が訪れましたよね。

ノヴィータでは、2017年からリモートワークを導入しており、そのきっかけはメンバーの地方転居でした。育児・傷病・介護などのライフイベントがあっても働き続けやすくするために、また昨今は感染症からの安全確保などの理由もあって、リモートワークを続けてきました。

現在では全社が常時リモートワークとなり、地方在住者も多くいます。リモートワーク環境を維持するための最低限の出社業務もありますが、それ以外はリモートワークという選択肢を極力選べるようにしています。物理的に顔を合わせることの少ない環境ではありますが、むしろ「リモート前提」「リモートだからこそ」という考え方で社内コミュニケーションを再設計し、活性化させようとさまざまなチャレンジや取り組みをおこなってきました。

2022年現在、どのようなコミュニケーション設計にたどり着いたのか振り返ってみたいと思います。

 

大前提となる期待値をすり合わせるために

以前掲載したノヴィータ流「ジョブ型雇用」に関する記事でも触れたように、ノヴィータでは経営目標へ繋がりうる個人目標を定める際に、「自分の業務スキル(ジョブディスクリプション)を言語化する」ことを実施しています。これにより、定めた経営目標と個人目標の「期待値のすり合わせ」を行い続け、常に内容更新し続けているのですが、心理的安全性を保ちつつこの関係性を構築するのはそう簡単ではないと考えます。なぜならば、経営と個人では立場が違いますし、双方の考え方をフラットに捉えて歩み寄る姿勢が必要になります。そしてリモートワークは、「最適」が極まる上に「偶然」がなくなり、「察する」もできず、油断するとコミュニケーション量が少なくなりがちだからです。

関係性構築のコミュニケーションには、以下が必要だと考えています。ひとつひとつの所作はよく取り上げられることではありますが、継続的に実施することが重要です。理想にたどり着くには、目の前の一歩一歩を積み重ねなければ到達しません。

 

1.定量的な目標設定

2.タテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーション

3.意識的な文化共有

4.フレームワークを用いた定期的な振り返りや改善活動の実施

 

上記には、ノヴィータが全社リモートワークになる前、オフィス勤務が大多数であった時から実行している施策も含まれていますが、全社リモートワーク体制となってから内容の見直しを行い、「緊急ではないが重要なコミュニケーションこそ不足しやすい」観点から施策を強化しています。

 

1.定量的な目標設定

稼働の把握、および目標の自己管理

ノヴィータでは日次での稼動記録をつけてもらっており、上司が稼働管理を行う他、その記録を通じて自己管理を促進しています。

リモートワークは働きすぎにつながりやすいなどが取り沙汰されているので、それに対する対策も兼ねています。勤怠ツール上で残業時間の1/2を超えた段階で、上司に自動的にアラート通知される仕組みと合わせて運用しています。

稼働管理は、考え方としては古く昔からあるもののため、「未だにそのようなことをしているの?」「会社が管理することで自律性に影響するのでは?」と、ともすれば惰性的な習慣と捉えられるかもしれませんが、このやり方をしているのには理由があります。

前提として、リモートワークの方がより自律性が求められる働き方であると一般的には言われます。会社が管理する一方、働く側にも自己管理が必要になってくると考えています。

ですが、意外と自分の稼働限界を知ることはできないものです。その人のキャラクターなどでも変わりますし、ライフスタイルによっても左右され、育児・傷病・介護などと仕事を両立していたらなおさらです。定常的にログを残して振り返らなければ、自分の稼働限界は認識できず、このステップを飛ばした状態では、限られた時間内で仕事の成果を上げるための適切な目標設定も、そして的確なスケジュールを組むことなどもできないのです。

個々人のリソースやキャパシティを意識的に把握してもらうためには、毎日どのような業務に時間を費やしたのか記録を残してもらい、定期的に振り返りした結果を今後のスケジューリングに反映させていくことが重要です。

このようなログの記録と振り返りは、今でもなお有効かつ効果的な手段であることは疑う余地がありません。こんなに多くのタスク管理ツールやプロジェクト管理ツールが世の中にあふれているのが象徴的なように、皆困っているからこそ、ツールの乗り換えで解決を図ろうとしているのだと考えます。そう、人類にとって自己管理はまだまだ難しいタスクと言っても良いのではないでしょうか。

余談ですが、この稼働管理は会社として、お客様へ最大の価値提供をするための設定でもあります。品質の均一化の他、「自分の価値を見積もれるようになる」効果もあり、これらは「経営の期待値」を個人が理解する情報にもなりえます。

 

定期目標面談

上司との月1の面談は出社勤務時でも必要でしたので、オンラインでも継続中です。数字目標の他、部門目標に紐づく個人目標を自ら設定してもらっているので、その内容を踏まえたフィードバック、課題分解などもおこなっていきます。

気軽にコミュニケーションを取れるよう、チャットシステム、ビデオ会議システム、バーチャルオフィスといった複数のコミュニケーションツールを契約、使いづらさによるコミュニケーションロスが起こらないよう、ツール特性に応じたルールを定めて運用しています。

「たかが面談を月1で実行するのは多すぎるのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、出社による対面コミュニケーションがない今では、偶発的なコミュニケーションが失われています。特に部下の立場から見ると、「忙しそうで声をかけづらい」「自分のために時間をもらうのは恐縮だ」と感じやすく、若年層であればあるほどその傾向は顕著です。出社の時のように、立場を超えた「人間同士」として信頼関係を築くという場も少なくなりやすいので、「目上の人はとても緊張する」という声が挙がったこともあるようです。

また、一定のリズムで打ち合わせを行うことは、個々のコミュニケーション回数を増やして互いの状況のすり合わせを行うことにつながります。部門目標は経営目標に紐づいているため、それと個人目標とのすり合わせの観点でも重要です。定期報告の機会を増やすことにより、そのタイミングまでに一定のタスクを実行して経過報告する、結果的に業務が捗ることにもつながるため、メンバーにはぜひ使いこなしてほしいやり方でもあります。これらの意味で、我々にとっては必要なコミュニケーション手段のひとつとなっています。

 

2.タテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーション

人事面談

上司と行う定期面談とは別に、人事との面談も行っています。こちらでは、長期的なキャリア設計に関する相談や、業績以外でのお悩み相談など、内容は多岐に渡ります。

「目標面談のみで十分では?」などのご指摘もいただきそうですが、当然ながら直属の上司とは接する機会も多く、さらには物理的な距離により「察する」ことがしづらいため、何か困ったらまず上司に申し出てもらえるよう、信頼関係作りに努めています。

それでも、長期的なキャリアプランやプライベートと仕事の両立の仕方など、それぞれ悩みは尽きません。定期目標面談では、社内における直近のキャリアパスについて話すことが中心になるため、すべてのお悩みに向き合うには負荷がかかります。そこで、人事が話を聞く面談を随時設け、俯瞰した観点で内容を分解したり、解決のヒントを提供したり、場合により社内の然るべきところに働きかけています。業務内容は違えど似たような悩みを抱えている他部署のメンバーとの引き合わせなども行っており、ノヴィータで行っている雑談会もこの考え方から人事が運営。「ママ縛り」「平成生まれ縛り」など、社内コミュニケーション活性を行う悩みを分かち合ったり情報交換をしたりする場になっています。

私自身も、ディレクション業務を体系的に勉強したい、という若手メンバーの悩みを人事担当者からヒアリングして、社内講座に至ったこともあり、非常に重要なコミュニケーション手段のひとつとして考えています。

また、リモートワークとなったことにより、入社時のフォローアップにはさらに力を入れています。自社の文化をブログ等で発信することにより、会社をご理解いただいて入社いただくケースがとても多いのですが、リモートワークである以上、信頼関係の構築には個人差があります。その後に活躍できるかどうかにも影響してしまうので、入社してみて戸惑いがないか定期的に人事面談を行ったり、歓迎の雑談会を開催したりなど工夫しています。

 

リーダー級会議

リモートワークだからこそ、横連携も重要視しています。各部門のリーダーを中心に、横断的な定例ミーティングを設けており、会社のあらゆる「気になり(まだ課題として顕現していない懸念点の状態の何某かを指します)」について部門間の情報共有を実施しています。

例えば、「業務進行や分担等に問題がないか」「精神面、体調面でもメンバーが悩みを抱えていないか」などざっくばらんに相談しあいます。他部署のリーダーが、プロジェクトを通じて別チームのメンバーのことを気にするというのも日常的にみられます。エスカレーションが必要と判断した情報については経営層に報告することで、懸念が小さいうちに課題解消へつなげています。

立場が人を作るとはよく耳にしますが、メンバーを束ねる管理側の立場に立ってもらうことにより、いままでの仕事の仕方や物事の捉え方も変えなくてはなりません。ちょっと壁打ち的に相談したくても、同じチーム内だと自分が率いねばならないメンバーしかいませんし、かといって責任を託してきた上司にはまだ言わないでおきたい…などだと、吐き出し先を失ってしまい、悩みを抱えてしまうのはよくあることです。

私自身、30そこそこで管理職の立場になり、周囲に同じような立場の女性がいなかったため、管理職同士の飲み会などに逆に気を遣われて呼ばれず、悩みのぶつけ先がなくて行き詰まった経験があります。

全社リモートワークの現在では、そもそもの物理コミュニケーションが激減した状況であるので当時の自分の状態と一概に比較はできません。ですが、「すべてが解決するともなんらかのゴールが必要とも限らない」前提を踏まえた上で、ちょっとしたことでも共有しあっていく場をゆるやかに設けることは、心理的安全性の確保につながり、少しでもリーダー職のメンバーが抱えるストレスを軽減できればと考えています。

 

3.意識的な文化共有

文化共有

出社勤務時は、偶発的に発生するちょっとした会話、メンバーとの会食などによるコミュニケーションでも、社風や文化について学ぶ機会は多くあったかと思いますが、現在では「偶発的に」そのような機会を作ることは難しくなりました。一方、リモートワークということもあって情報はクラウドに集約され、アクセシビリティは高まったといえます。

長く業務に携わっていただくためにも、社風や社内文化に1日でも早くなじんでいただきたい気持ちは、リモートワーク主体となったいまでも以前と変わりはありません。業務内容の説明、身につけて欲しいビジネスマナー、知っておいて欲しい会社の歴史などについて、全社リモートワークとなった後に入社したメンバーに対しては、意識的に伝える必要性をより強く感じています。

鍵となるのは「偶発性に頼らないこと」と「明確化・言語化すること」だと考え、現在は随時、仕組みを見直しています。目下は部門外の社歴が長い先輩社員と面談できる体制を整え、日常業務でも組織の壁に固執せずに振り返りや学びにつなげる取り組みを実施しています。

会社を成長させるために採用活動をしているので、社内の業務改善などについて是非積極的に参加していただきたいですし、そのためにも「なぜその状態に至っているのか」といった観点で過去経緯を把握して実行に至って欲しいことからも、課題背景や文化をできるだけ明確に言語にして、共有したいとも思っています。

また、リモートワークは学習・教育観点では少し不利なスタイルでもあります。そのため、こちらも同じ考え方で「偶発的」「背中を見せる」ではないやり方を心がけています。受託の事業、そしてリピートのご発注によってノヴィータは成長してきましたので、その文化を今後作っていくメンバーには、ビジネスマナーやスキルの所作だけではなく「なぜこれを身につけねばならないのか」をしっかり理解した上で腹落ちして学んでもらえるよう心配りしています。

 

朝会の実施

全社リモートワークとなる以前から、全社へ情報共有を行うための各種施策を行っていました。半年に1度の社員総会、月1回の数字結果報告、月1回の各人の業務についての5分間ショートプレゼン(LT大会。LT=Lightning Talkの略)です。これでも情報共有機会は多い方だったと思いますが、全社リモートワークを受けて、週1回の全社朝会も追加で実施することにしました。

リモートワークで見えにくくなってしまった会社の情報共有フォローと、一体感醸成のためです。週の初めに集まるためリズムがつくれるといった意見や、メンバーがいることにより組織に属している・仲間がいると感じられるという意見などがありました。また、内容面においても、リモートワークでは限られた情報しか得られにくい場合が多いため、今現在の会社の姿を定期的に明らかにすることが情報共有フォローに結びつき、自律的に動くためのインプットになっていると、社内アンケートより実感しています。

これもまた、ただ単に理念だけを押し付けるような、一方通行かつ陳腐化した定例会議にならないためにも、随時各自にもアウトプットを促し、都度確認する場として活用しています。




4.フレームワークを用いた定期的な振り返りや改善活動の実施

リーダー研修会

稼働管理を行っているリーダー職以上に対しては、タスクマネジメントや業務プロセス分解、KPTによる振り返りを学びつつ実践する場を提供しています。リモートワークを取り入れる前の2016年から継続しており、よもやま的に相談のできる会議体とは違い、中長期課題に取り組みなんらかのゴールまでたどり着くための場としています。

 

  • 長期目標設定と設定した目標の達成管理方法
  • 振り返り手法としてのKPTの実施
  • 業務プロセス設計概念の理解
  • 抽出された課題解消方法検討

 

ただ単にフレームワークを学ぶだけではなく、実際発生する社内課題に対してフレームワークを用いて上記に取り組むことで、課題が発生した際に「仕組み化で課題解決する」思想を継続的に見つけられる体制を提供しています。

継続して実施することで、リーダーへの負荷はかかってしまいますが、社内の課題が解消され続けることで継続的に得られるリターンや、「なんとなくモヤモヤしていること」を言語化して課題へ昇華していくことで課題解決への近道につながることもあり、この場があることのメリットは大きいと、毎年の振り返りで前向きなコメントが確認できています。

こちらはリモートワークに特化した研修ではありませんが、リモートワークでは「察する」ができなかったり、情報設計によっては情報が得られず課題解決が困難にもなりやすかったりするため、この状況だからこそ課題解決手法が増えることで対処がしやすくなり、効果的であると考えています。

 

コミュニケーションコストをかけてでもおこなうべきか

このような社内コミュニケーション設計をおこなっている、と社外の方にご説明する際によくいただくご意見として「これほどコスト(手間暇人件費)をかけてまでコミュニケーションをとるほどのリターンはあるのか?」が真っ先に挙げられます。そのときは必ず、「定量的にはノーだが、定性的にはイエス」と回答しています。

もちろん定量的な効果指標をもとに分析できるに越したことはありませんが、指標や変動要素が多くそこを突き詰めても仕方ないかな、というのが現状です。経営層、部長クラス、リーダークラスがそれぞれ定期的な振り返りをおこない、マイクロマネジメント観点から経営観点まで解像度を高めたり低めたりして、それぞれのレイヤにおいて定性面で一定の成果が出ているかを継続して確認し続けることも重要です。

ノヴィータにおける定性面の成果のわかりやすい一例として、離職率が低下したこと、何か気になりがあっても改善の期待を持って申し出てくれること、組織をよくしようという活動が自主的なものを含めて複数みられること、などがあります。

5、6年継続してきた結果、社内で「共有はノヴィータの文化」という言葉を確認できる機会も出てきました。リモートワークでのコミュニケーション設計や文化づくりに困る企業が多い中、とても喜ばしい傾向です。

「組織に必要な情報とはなにか」「どの人にどう共有していくか」を常に見直し、適切な共有方法と内容のラインを見極め続けていく限り、「コミュニケーションコストをかけてでもおこなうべきである。言語化と共有は、組織において効果を発揮し続ける。」と考えます。

会社組織も人間と同じように生き物であると捉えています。営利企業として、事業の利益を追い求めることは当然ではありますが、組織の維持のためには「適切な手間を掛けなければ、発展も継続も得られない」こともまた一方では真なり、我々は考えています。

 

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