NOVILOG

株式会社ノヴィータが運営するブログメディアです。メンバーのこと、文化や価値観、ノウハウ、様々な活動などについて発信します。

地方都市のデジタル人材育成で辿った3年間のあゆみ

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兵庫県豊岡市では、進学などで地元・豊岡市を離れた男性は2人に1人は帰ってくるのに対し、女性はその半分、4人に1人しか帰ってこない状況があります。そのため、豊岡市は豊岡に住む女性が働きたいと思える職場を増やすことなどにより、女性の回復率(女性が豊岡市に帰ってくる率)の向上を目指しています。

豊岡市は、その解決策の一つとして、業務の細分化を行うことで生み出される、1日2時間から、週1日からの超時短勤務「プチ勤務」という仕組みを推進。あわせて、子育て中の女性向けへ働くことの興味や自信をもっていただくためのセミナーなどを行ってきました。
ノヴィータではLAXIC(ラシク)や自社での働くママの雇用などで培ったノウハウを活用することで地域の雇用創出に貢献できると考え、兵庫高度IT起業家等集積支援事業の認定後、このプチ勤務を取り入れるとともに、2019年に事業所を立ち上げました。

 

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豊岡事業所外観(2019年) ※現在はクローズ


「ラブレターを書くように」

2019年当時、ノヴィータは東京本社オフィスの出勤メンバーがいる中、数名は地方在住で自宅からフルリモートワークを行うメンバーがいる状況でした。十数年行っている主力事業が、短納期でスピード感が必要なものであったことで、効率を高めた働き方をしていました。

その中で、在宅勤務を行うメンバーとして豊岡在住の女性を採用しました。
豊岡事業所で行っていくのは、デジタルマーケティング業務。皆、これまでのキャリアでデジタルマーケティングの経験はありません。
当時のノヴィータでは、デジタルマーケティングが指すもののうち限られたサービスしか提供できておらず、その範囲の拡張を豊岡事業所が担っていくという想定でした。メンバーは、OJT(実務による職業教育)で採用業務を通じたデジタルマーケティングを学んでいきました。

事業所立ち上げ直後、間もなく、チームで動くようになります。チームでの打ち合わせの時だけ、週1オフィスでの勤務を行いました。これは、信頼関係を育てるために顔を合わせたいとする立ち上げメンバーの意向でした。

 

求人票を書く時にしきりに伝えていたのが、「ラブレターを書くように」ということ。ターゲットにとって「いいな」と思えるように書くということです。
誰にでも好かれたいと思って書くと誰も振り向いてくれませんし、こちらの好きな気持ちを押し付けても、相手が良いと思わないかもしれません。文章や熱の込め方だけではなく、見て欲しい人が何を書けば響くのか、相手であるその人のことを知り、どこのチャネル(経路や媒体)を使えば会えるのか、色々見て探そうとも伝えていました。
結果的に、受託時に「言われたとおりにやるわけではなく、目的に立ち返る」マインドをここで学ぶこととなりました。この目的意識が強い考え方は、ノヴィータの文化でもあります。

 

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豊岡事業所内で勤務する様子(2020年)

 

湧き上がる自分の思いに合った仕事の大切さ

ラブレターのことと同じくらい伝えていたのは、「楽しく仕事をしよう」です。「楽しい」はいろいろな解釈がありえますが、与えられたオペレーティブな仕事ではなく、やりたい仕事、イニシアチブをとっていける仕事に携わることを勧めていました。湧き上がる自分の思いと重なる仕事は、自律的でいられるし、大変なことがあってもきっと楽しいよ。というメッセージです。

 

事業所が立ち上がった当初、メンバーは仕事に対し自信が持てていない様子が印象的でした。しかもメンバーにとっては新しい仕事への挑戦でもあり、自信がなくなるのも当然でした。メンバー個々人のパーソナリティと、仕事が見つからないなどの環境によって自信をなくしていたのかもしれません。
指導を行うにも、自信がないと新しいことを学ぶ効率が下がっていきます。別地域から、豊岡事業所のマネジメントを行っていた指導担当は、自身の離職経験からも自信をつけるように励まし、仕事の不明点についてフォローアップを続けました。

ノヴィータは何年も行っている事業においてフローを多く整えていましたが、豊岡でやっているのは右も左も分からないところからの立ち上げ。それゆえに、豊岡事業所の独自の動きが大きくありました。連携を行うにも、他事業部では効率性の観点から「質問者を絞ってください」と依頼していました。
他事業の効率性に合わせつつ、整えて情報を連携できる人が指導担当しかいなかったのもあって、豊岡メンバーとのハブになってやりとりを行いました。

今振り返ると、もとは1人1人が毎日各自の自宅で勤務する想定で、豊岡オフィスも要らないのではと考えていました。サービス提供を通して結果的にチームになることは想定していましたが、「信頼性ありき、チームづくりありき」の立ち上がりとなったのは想定外でした。一方、数年間やってみた感想として思うのは、リアルに集まらない中で信頼関係を築くのは難しいこともあり、何らかコミュニティが醸成される仕掛けは必要ということです。
また、指導者やメンターの存在は必要で、働く時に背中を見る・真似から始めることで、成長は早まったのではないかと思います。

 

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社内の「先駆者」として存在感が増す

豊岡事業所ができてから1年。他事業部と連携してノヴィータの求人票執筆を行う傍ら、求人票執筆(採用支援)サービスをご発注いただける企業様をデジタルマーケティングを活用して探し、豊岡事業所独自で顧客を持つようになりました。
豊岡市に住むママ自身として良い情報が少ないと感じたことが、育児や仕事の情報提供をやりたいという思いから、豊岡在住ママに向けたSNSの立ち上げにもつながりました。

そして2020年、世の中はコロナ禍に突入します。ノヴィータも大きな影響を受け、2020年6月の社員総会では「案件獲得のやり方を変えなければいけない」というメッセージが代表取締役社長の三好からなされ、それをきっかけに豊岡メンバーの意識も変わりました。
コロナ禍前から在宅勤務をしていたため、土台の働き方に影響がなかったことで、仕事の意識が変えやすかったのもあったようです。

立ち上がりの当初は成長速度などに配慮し、豊岡事業所独自の動きが強かったのですが、このタイミングから月次報告会などに参加し始めました。全社の数字情報にも触れ、他のメンバーと変わらない情報を得るようになります。

本社のデジタルマーケティング強化方針に伴い、これまで体当たりでトライしてきたデジタルマーケティングの実務担当として行うようになりました。既にノウハウを持っていたことで戦力となり、社内で存在感が増していきます。
自律的・積極的に新しい挑戦を行って仕事をしていたから、後々で「そのやり方の社内における先駆者」としての存在感が増したのだと思います。

その頃、豊岡のママに向けたSNS運営の実績から、他社のSNS運営代行を請け負うようになるなど、商材も増加していました。

 

自律的な仕事の結果、チームの在り方に変化

2021年にかけて、事業所の立ち上げを行ってきたチームメンバーが新たなキャリアに向かってノヴィータを離れたり、残ったメンバーも産休育休を取得したりしました。そして収益や事業を意識した動きをしてくれるメンバーの入社で、チームの空気が変わり始めます。

2021年早々に、但馬技術大学校から「デジタルマーケティング習得コース」を受注。これは、パソコンやスマートフォンを通じて商品を売る仕組みを戦略的に設計し、ビジネスに貢献する人材育成可能な講座をノヴィータが作り提供するというものです。在宅勤務ができれば育児と仕事が両立しやすいというところから、女性就労支援の側面が強くありながら、女性のみならず男性にもご受講いただいています。
受注当時、カリキュラムができているわけではなく、初めてばかりの取り組みで3ヶ月の授業を進めるのにてんやわんやでしたが、受講生にも支えられながらなんとか修了しました。直後、デジタル化への機運が高まっている豊岡市からもお声がけいただき、1ヶ月後にはノヴィータの教育事業第2弾として、豊岡市経由で提供を開始。

デジタルマーケティングのOJTを通じて学んできた「言われたとおりにやらないマインド」を、デジタルマーケティング習得コースの提供で自ら発揮することになりました。
また、現在は指導担当に聞かずとも、メンバーが他事業部と直接やりとりができるようになっています。

 

3年前と比較し、初期メンバーの半分ほどが入れ替わり、受ける仕事が変わりました。
ただし、受ける仕事が変わったことでタスク量は増えました。
「自律的な仕事をする」というキーワードがあるので、いま所属している人のスキルにより、受けやすい仕事が変わったのです。さらには市況も変わっていることで、今ある商材や取り組みを見つめ直し、どうやったらよりビジネスに貢献できるかを考え始めています。

 

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但馬技術大学校「デジタルマーケティング習得コース」スクーリングの様子(2021年)

 

3年で身につけたビジネス感覚をもって、チームは進化を続ける

立ち上がりから3年、現在は助成期間も終わり、「ビジネスなので、お金を稼いでこないと続けることはできない、ではどうするか」を自ら考えていく意識付けがしっかりできています。

豊岡事業所は先日、豊岡という場所に関わらないノヴィータのデジタルマーケティングを担っていくチームとして再編成されました。体制を強化し、ますますのスキルアップを目指しています。

この3年、人が変わるだけではなく、コロナ禍などで激しく市況も変わりました。当然ながら事業やチーム作りも変化する必要がありました。

2019年の事業所立ち上げの際は、エネルギーや思いの強い人がマッチしていました。指導担当がいたとはいえ、張り付きで教える体制はなかったので、成長意欲が高く、やりたい思いの強いメンバーが必要でした。
2022年現在、やりたい思いの強さに加え、「今ある業務を運用できる」メンバーが在籍しており、より会社の方針やビジネスのことを理解し、業務を行える人が求められるようになってきています。すなわち、採用基準が増え、かつ求めるレベルが上がっているのです。

この3年間でできあがったオペレーションの仕事に携わる・それを着実にこなす期待値の一方で、今後も考えると開拓精神も必要になってきます。チームの再編成を機に、より多くの仕事を手掛け、かつ会社の方針から各自が将来を考えリーダーシップを発揮するという動きに挑戦していきます。

 

また、女性就労支援の狙いが強かった「デジタルマーケティング習得コース」をきっかけとして、チームに男性が参画するという変化についてご紹介させてください。
豊岡におけるチームづくりは、女性就労支援という軸がいつもありました。女性就労支援の求人イベントで、その軸が見える求人票メッセージだったこともあり、立ち上げメンバーはママが多かったのですが、それは決して女性の働き方だけを重んじているわけではありません。男性女性問わず、皆の働きやすさを考えることが結果的に女性の働き方に影響する、という順番であるものと考えており、今回のご縁がまさに証明になったと考えています。チームに男性が入ったのは、チームとしての大きな進化だと思います。

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但馬技術大学校「デジタルマーケティング習得コース」第2期修了生(2022年)

 

多様な働き方を受容した結果、シビックプライドにつながる

この3年間では、「シビックプライド」側面でも変化がありました。シビックプライドとは、住む地域に対する市民の誇りのことで、自分自身が市民として関わることで地域を良くする意識を持っていることを指します。

今回ご紹介したチームづくりを推進するにあたり、豊岡市役所との連携は欠かせませんでした。そんな中、「女性の働きやすさ」を考えたいという観点から、2019年当時の先進事例として市長面談やワークショップなどにも参加させていただきました。
メンバーはこれらの機会を通じ、豊岡という地域でできることを少しずつ考え始めることになりました。これが、豊岡在住のママに向けたSNS運営にもつながっています。

同じく2019年、進学で出ていってからいずれ帰ってくる際に「具体的な働き先としてイメージできる事業会社」を高校生のうちに取材しておくという長期的な視点に立っての授業が、産学教公銀の連携により実施されました。こちらにもノヴィータが参加しています。機会がなく地元のことを知らないままにすることを回避し、シビックプライドの育成につなげていく狙いがあります。「求人票作成」を通じた取材ということで、具体的な作成方法などについてノヴィータのメンバーが、生徒に対し指導を行いました。

2021年からは「デジタルマーケティング習得コース」を通じて地元の人にスキルを教えています。また、ノヴィータが全社リモート勤務に移行していることで、様々な地域で働くメンバーと連携する中で、豊岡という地域を見つめる機会も増えています。

単に「豊岡という場所で働くことが可能なノヴィータという会社」というだけではなく、働き方やジェンダーギャップ解消の観点を中心に豊岡市の中でご注目をいただけるようになり、3年前では考えられなかった地域活性の有意義な取り組みに、数多く携わることができました。

 

豊岡市はジェンダーギャップの解消、デジタル化等を強く推し進めることが市の活性につながるという強い気持ちのもとに、数年前から粘り強くお取り組みをされてきました。今後、豊岡市は自律的に働ける人がいる街として、市外県外の企業に対し、アピールをしていければと考えています。
このような豊岡市の土壌があり、かつノヴィータも豊岡市から多くのバックアップをいただくことができたことで、今回ご紹介したようにチームが育ってきたものと思います。

働きたい女性が働きやすく、かつ働きがいが持てる企業とそうでない企業の差が大きくついている状況があります。我々の経験から振り返るに、これは雇用する企業側の意識も大きく影響していますし、それらの企業を支援する側の自治体の考えにも大きく影響を受けているといっても過言ではありません。

様々な方に支えられながら、ノヴィータが3年かけてたどり着いた事例を当記事でご紹介しました。共感いただき、同じような取り組みを目指す自治体の方がいらっしゃったら、お問い合わせをいただければありがたいです!

 

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