広報という仕事
「広報」ってなんだろう。
中根さんにいくつかの質問を浴びせながら、内心、モンモンと考えていた。
小さいころから本が好きで、高校時代はインターネットにハマり、大学では図書館情報学を専攻。当時流行っていたmixiもいち早く活用、卒業後はスマホゲーム会社に就職し、自社WEB担当、広報、財務系事務などを経験。5年勤めた会社を辞め、2014年9月、ノヴィータに入社。ひとりで広報部門を立ち上げ、現在は、発信業務にとどまらず、人事や経営サポートなど、幅広く担当している。
…そんな中根さんのプロフィール、読めば読むほど、すごい。加えて、中根さんが発信しているブログ(note)やツイッター、フェイスブックを読むと、さらにすごい。彼女の頭の中がよーくわかる。思考の過程や発信の意図、これからの自分の方向性、ひいては広報という仕事のゆく末まで。何を考え、何に悩み、何を目指すのか。
正確に、誠実に、わかりやすく。あらゆる情報がきちんと整理整頓され、すっと頭の中に入ってくる。さすが、情報の分類、利用、蓄積という観点を学ぶ図書館情報学科卒、だ。何より、この人は、『編むこと』『伝えること』が好きだ、そう確信した。
会社を編集する
「まさに。そうかもしれません。“インハウスエディター”って職種、知っていますか? 数年前、広報界隈で聞くようになり、私自身そういう役割があるということを知りました。インハウスエディターとは、会社の見せ方を編集する人。私も会社の編集ができるようになりたいと思っています」
中根さんいわく、「企業の中にある程度コミットして企業を編集、発信して行く人」「事業だけの目線ではなく、ときにパブリック・リレーションズの目線において、経営や事業の進むべき道を考える人」がインハウスエディターの役割だとか。
「よくよく考えると、私の広報という業務も一部、インハウスエディターのようなことをしているなと思っています。会社の情報流通を把握することも編集ですし、会社発信のメッセージにも、編集は必要ですから。そして、その延長で、広報は、会社の在り方すらも編むことができると思っています」
なるほど、納得。それにしても、たったひとりで広報を立ち上げ、広報とは何か、広報の未来をここまで追求、いや探求している広報担当者を、私は知らない。中根さんを突き動かす、その原動力とはいったいなんなのだろうか。
「広報という仕事に出会ったのは本当に偶然でした。もちろん、情報を整理してだれかに伝える。文章を読む、書く。そういうことは大好きでしたが、広報という職種自体、知らなかったくらいです。最初に就職した会社では、自社のWEB担当で、コーディングをする部署に配属。でも、隣に広報担当者がいて、プレスリリースのWEB化をしながら広報業務の雑用を引き受けたりする中で、広報って面白いなと思うようになったんです。情報を扱う仕事だし、大学で学んだことも生きるな、と思って」
ノヴィータには共通のワードがない!?
もっと深く広報という仕事に携わりたい。そんな思いから、ノヴィータに転職した。
当初はWEBディレクター8割、広報2割で勤務、ということで採用されたが、入社してすぐ、自ら広報を立ち上げたいと広報専任を志望。社長に直談判した。
「勢いで言ったはいいものの、実際は“ノヴィータという会社はこんな会社です! ここが魅力なので、ぜひ取材してください!”なんて、お世辞でも言える状態ではなかったんです(笑)。まず、会社にいる人それぞれが、会社に対する認識がバラバラ。“こういう会社です!”と説明できる、共通のワードがない。その事実を知って、愕然としました」
中根さんが入社した当時、社員は30名ほど。WEBの制作に携わっている会社であることは間違いないが、ノヴィータの強み、個性とは何か? と問われると、経営陣含め、社員それぞれ、説明すらままならない状態だった。
近いようで遠い、隣の席の人に関心をもつこと
「まずは、中から組織を整えないといけない。つまり社内広報が大事。そう思いました」
そこで、まずは“カルチャーの明文化”、つまり会社に対する共通のワードをもつべく、社内Lightning Talk(LT大会)の運営を始めた。ひとり5分、各自が業務をプレゼンすることで、今トライしていること、がんばっていることを知ってもらう機会をつくった。単なる活動報告ではなく、今考えていることを互いに知るための場だ。
「自分の言葉で話すこと。近いようで遠い、隣の席の人に関心をもつこと。まずはそこからだと思いました。ノヴィータのような規模だと、日々、自分の仕事をこなすことで精一杯。当然ながら、制作気質な社風で、バックオフィスという考え方もなかったころです。今、超忙しいんだけど、こういう場って意味あんの? 広報って意味あんの? という空気はひしひしと感じていました……」
知らないことは伝えられない、納得いかないものは自慢できない。嘘がつけない、そんな中根さんの性格もあって、粘り強く、粛々と。最初は受け入れられづらかった小さな活動が、外部のお力添えもいただきながら、数年たった今、少しずつ実ってきた気がする、と中根さんは笑う。
知ってもらえばいいってもんじゃない
広報ってなんだろう。再び、考えてみた。
各メディアの対応に追われる、華やかな仕事。なんとなく、そう感じていた。
でも、中根さんと話しているうち、「広報」は、もっと広く、もっと深く、そして単なる「広報活動=知ってもらう活動」とはまったく違うものだと思い始めた。
「そう言っていただけると、ものすごくうれしいです。まさにそれこそが、私もたどってきた道なので(笑)。もちろん、広報の仕事でいちばん期待されているのは、“(だれかに自社を)知ってもらうこと”です。知られなかったら、ないのと同じですからね。と同時に、“すでにノヴィータを知っている方に、より深く理解されること”も大切です。
ノヴィータの場合、「WEBサイトを制作する会社」「人材事業をしている会社」「ママ向けWEBメディアをやっている会社」「多様な働き方を受け入れている会社」「コンサルティングもやっている会社」「広告クリエイティブを制作する会社」といった見え方があると思います。特に今は、リモートワークをはじめ、「多様な働き方を受け入れている会社」で目立っているはず。現に、そういうアプローチでメディアに露出していますから。
そして、ここからがもっとも大事。たくさんの人に知ってもらえたとして、その後、会社としてどうしていきたいのか? 結果的に、それは事業につながるのか。そこを明確にしないと、目的と手法が本末転倒になってしまいます」
……ほほう。「広報」って深い。そして、なんて面白いんだろう。
ありきたりな言葉になってしまって申し訳ないが、広報という仕事の可能性を、ひしひしと感じた。それは、真摯にこの仕事に向き合ってきた中根さんが発する言葉によるところが大きい。
結果はあとからついてくる
入社して7年。うまくいっていることばかりではない。まだまだ、社内の共通ワードは模索中だし、広報から直接的に会社の利益につながる手法は明確に見えてはいない。
「広報という仕事がなかなか理解されずに悩んでいたころ、小田垣に“いや、会社にとっては有益なことだよ。結果はあとからついてくるから”と言われて救われました。
理想が高くて完璧主義をこじらせ気味なんですよね、私。だから、理想と現実のギャップに苦しむことが多いんですが、やっと、私自身が自分の気持ちに折り合いがつけられるようになってきました。コンプレックスだったけれど、ツイッターやnoteで自分の考えを発信するようになったことが大きいかもしれません。
ノヴィータという、40人ほどの小さい組織に所属しているからできることはたくさんあるし、だからこそトライ&エラーが許される。何より、会社自体が少しずつでも“変わろう”としている部分が好きなんですよね」
外を見て、中を見て。視点をくるくる変えながら、七転八倒しながら、日々広報活動をする中根さんの成長過程こそ、ノヴィータの成長過程ではないだろうか。ふと、そんなことを思った。
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