今回の事例は納品後にクライアント様と制作における「振り返り」を行ったことで貴重なフィードバックをいただき、次に繋げる「Try」を掴むことができたお話です。
プロジェクト進行中に発生した課題に随時対処しながら、つつがなく進めることが大切です。しかし、その時に課題をなんとか収めたから良いということではなく、納品後にきちんと振り返りを実施し、客観的な視点で正確に分析・評価することにより、確実に自社のサービスや品質の向上につながります。今後同じような状況に出会った際、最適な対応ができるようになるためには、「どうすべきか」を言語化し次にその行動をとれるようにしておくことが重要です。
「最適な対応」を客観的に見つめるためには、自社の視点のみでは足りません。今回はクライアント様の賛同とご協力のもと、このような貴重な場を設けることができました。
まさに今、Web制作・開発を行っている方や、社内や社外の制作間でトラブル発生が多くプロジェクト進行でお悩みの方は、今回の事例が参考になると思いますので、ぜひお読みください。
Siwakee(シワキー)株式会社様のご紹介
今回、一緒に振り返りをする機会をいただいたのはSiwakee(シワキー)株式会社様です。会計ソフトに記帳する日々の作業負担を大幅軽減できるノーコードの仕訳データ変換クラウドサービスsiwakee(シワキー)を提供されています。
https://www.siwakee.com/
業務システムから出力したデータや、Excelで作成した管理表から、会計ソフトに一括取込できる仕訳データを簡単に作ることができるサービスです。特許技術(UI特許)を用いて、ドラッグ&ドロップによる直感的な操作で仕訳を切るようにデータ変換が可能なのが特徴で、複合仕訳にも対応しており、セキュリティ面にも配慮されています。
多くの企業で導入されている勘定奉行、弥生会計、マネーフォワードクラウド会計、freee会計など様々な会計ソフトに対応しています。中小企業にとっては、DXを推進するにも予算や人員の制約があり、導入のハードルが高いものですが、会計ソフトとのデータ連携ソリューションが簡単かつ低価格で利用できるsiwakeeは、中小企業の会計DXを支援しています。
このたび、siwakeeのプロダクトUIのデザインと、製品ポータルサイト制作をノヴィータにご依頼いただきました。
Siwakee代表の青柳様は、ノヴィータ代表の三好と学生時代からお付き合いがありました。とある勉強会で出会ったものの、ビジネスの事業内容が違うことでしばらく連絡は途絶えていたそうですが、siwakeeのリリースに向けてプロジェクト計画を検討した際「三好さんの顔が浮かんだ」とお問い合わせいただきました。
当初は、別の大手制作会社様へご依頼を検討されておられたそうですが、予算が合わないなどで具体的なご相談に至る前に、残念ながらお断りされてしまいました。依頼する先に断られ、どの制作会社へ依頼すれば良いのか、希望に応えてくれる制作会社はあるのかと悩まれ困っていたところ、ノヴィータにご相談いただきました。
三好から「このような形なら実現できます」と提案し、最終的にノヴィータへご依頼いただく運びとなりました。青柳様からは、「快く引き受けていただけて大変有難かった」とのお言葉をいただきました。
今回ノヴィータが対応した範囲
ノヴィータにて担当したのは、会計クラウドサービス「siwakee(シワキー)」のプロダクトUIと製品ポータルサイトの2サイトです。
プロダクトUIはノヴィータが担当しましたが、システム領域の部分は別会社様が開発を担当されていました。
WebサービスやWebサイト構築において、ときに開発、制作が異なる会社や部署があり、相互で協力して行う場合もあります。会社間で専門性や文化などは異なることが多く、「当たり前」をすり合わせずにプロジェクト進行してしまうことでトラブルに繋がりかねないことも多く存在し、今回の事例もまさに典型例のようなことが起こりました。この辺りも後ほどお伝えします。
製品ポータルサイトについては、別のシステムと連携するなどはなく、独立したサイトとして制作を行いました。
振り返りの手法について
今回の振り返り方法として用いたのは、KPT(ケプト)方式です。KPTとは、改善や課題解決の手法のフレームワークの一つです。
もともとはシステム開発の領域で使われていたフレームワークで、アジャイル開発における振り返りの手法としても多くの組織で活用されています。「Keep(成果が出ていて継続すること)」「Problem(解決すべき課題)」を洗い出し分析したうえで、具体的な改善策としての「Try(次に取り組むこと)」を検討するという流れで行われます。
ノヴィータ関係者の記入後、青柳様に「Keep」「Problem」を記載いただき、プロジェクトに携わった全員で読み合わせました。内容を掘り下げていき今後に活かすポイントを明確にしてから、「今後また仕事をご一緒させていただくことがあれば活かしたいこと」としてTryの会話を行いました。
振り返り内容について
プロダクトUIの振り返り
まずは、プロダクトUIについてです。主に、全体進行と実装部分の2点で問題点が挙がりました。
プロダクトUIをご相談いただいた際はデザインが主軸であったため、クリエイティブメンバーのみをアサインすることにしました。ノヴィータ側ではデザイン制作に比重が置かれていると判断したためですが、最終的にはシステムとの連携においてデザイン以外の技術寄りのコミュニケーションがスムーズに行かず、全体進行が滞り、ご迷惑をかける結果となりました。
青柳様からは「技術的要素が加わるとディレクターとその場で議論することができず、都度、開発側への照会が必要だった」ことをProblemとして挙げられています。
一番の問題点は、要件定義の体制とコミュニケーションフローの取り決めができていなかったことです。近年は、ディレクション、クリエイティブと切り分けできない部分もあり、UIのところでもデザイナーだけでなくフロントエンドメンバーも含めたコミュニケーションの必要性も出ています。
クライアント様の満足度に直結する部分でもあるので、社内における受託可否判断時における要件定義と、ディレクションスキルのルール定めを徹底するとともに、打ち合わせの場には、開発側も同席させてフロントエンドの部分も含め議論する体制を積極的に検討することにしました。
全体進行が滞ってしまった後、これ以上のご迷惑とならないように毎日短時間、社内で定例会議の時間を設けました。コミュニケーション課題が発生してからの対策ではありましたが、適宜のリカバリを行った点は青柳様からも評価をいただきました。
また今回は、UIやフロントエンド部分をノヴィータが担当したものの、ビジネスロジックとインフラ、システム構成要素は別会社様への依頼のため、制作物の連携の必要もございました。
SI・システム開発企業と、ノヴィータのようなWeb系企業では当たり前と思っている文化や事柄が違うことも多く、用語や機能の認識が違う場合もあり、ギャップが発生しやすいものです。その結果、サイトの実装部分では、システムとのつなぎ込みにおいて品質を満たさないコードの納品が起こった点や、Windowsでの表示の問題がなかなか解決しなかった点を連携先の別会社様からご指摘をいただくことになりました。
Macで問題が見つからなくても、Windowsでは挙動がうまくできていなかった点があるなど、チェック体制が甘かったのは否めません。
Windowsの検証で見落とすことになった部分を社内共有し、今後の機能要件定義時の検討課題として盛り込むことにしました。また確認期間をどれだけ積むか、成果物を責任者がチェックする際に、チェック項目を厳しく定めようと改善策を講じることにしました。
SI・システム開発企業とWeb系企業では常識がまったく違うからこそ、細かなところまで最初のうちに詰めておく必要がありました。また、SI・システム開発企業側が求めている部分をフロントエンド開発メンバーに開示したりなどの柔軟な対応も想定しておかなければいけませんでした。
青柳様からも、「SI・システム開発企業と、Web系企業では常識などが違うところがあり、今回の制作を通じて、カルチャーギャップをどう埋めていくかは今後の参考になりました」とお言葉をいただきました。
製品ポータルサイトの振り返り
次に制作した製品ポータルサイトでは、先の反省点を活かしてディレクターをアサインし、しっかりと要件整理と進行管理を担うことで、デザインはじめクリエイティブ制作のクオリティアップに各担当が集中できました。
また、青柳様はWeb制作に関して知識をお持ちで、さらに合理的かつ迅速なご判断をいただけたことで、制作側として大変コミュニケーションが取りやすく、ご相談もしやすかったこともプロジェクト進行の助けになりました。
Web制作をご依頼いただく際、依頼側の窓口の方々がWeb知識をお持ちでないことも多くあります。制作側の目線に寄せながらご相談できると非常に進捗がスムーズに進むため、ノヴィータの関係者からは「Keep」として挙がるほど大変ありがたいことでした。
青柳様からは、問題や遅延が発生しそうで不安なところはあったものの、依頼事項や議論を丁寧に文書として記載してくれたため確認しやすかったとご意見をいただきました。また、リスクが顕在しそうな際、前回と同様に適宜のリカバリを行った点を評価いただきました。
評価をいただく一方で、新たに提案フェーズでのProblemが発生しています。
製品ポータルサイトでは既存のCMSサービスを活用しましたが、記事のサムネイル画像を使用した際に、本番環境でボヤけてしまう現象が起こってしまったのです。
他のメリットを享受できると判断してご提案したものの、仕様をそもそも担当者が理解しきれていなかったことで本件が起きてしまいました。
世の中には様々なツールやサービスがあり、すべての仕様を把握するのは非常に難易度が高いといえます。とはいえ、問題が判明した時のエスカレーション先の定め、社内的にトラブル知見を溜めておく、別の対策方法を常に準備しておくといった、状況によって最善策を取れるように改善することを社内で確認しました。
青柳様からも「実装に必要な技術対応について、事前に十分な説明を得られなかった。利用するサービスの仕様を事前に把握していれば避けられた問題もあった」点がProblemとして挙がりました。
やはりこれも要件定義のところで、つぶしておくべき事項が複数あったと改めて認識した次第です。幸い、大きな問題にはなりませんでしたが、要件の実現可否や機能要件定義の確認を潰していく工程が甘かったことは反省点です。
多様な視点での客観的な振り返りにより「最適な対応」を深めた
今後の制作にあたって、今回の振り返りによって出てきた様々な改善策を講じていきます。具体的には案件定義・機能要件定義の決め方、サイト構成や能力に合わせたディレクションのアサインルールの選定、協業会社が発生する場合の事前の細かなすり合わせ実施、リスクが顕在化しそうな時のコミュニケーション方法を実行することにします。
当然ながら、初手から何事もトラブルなくご納品まで至るに越したことはありません。できるだけ先回りして課題に対応しながら、スムーズに終えられるような進行に努めています。
しかしながら、様々な要因で先回りが叶わなかったり、トラブルが発生したりすることもあります。その際には最適な社内エスカレーションを行い、早く打ち手をとることで、お客様のご期待やアウトプットにお応えできると考えています。
状況に応じた「最適な対応」「最適な社内エスカレーションと打ち手」とは言いながらも、自社の視点の振り返りのみでは主観に寄りすぎて客観性が足りないこともしばしばです。今後同様の事態を防ぎ、より良いプロジェクト進行を考え続けるために、お客様の視点からもご意見をいただけたことは貴重でした。
また、多様な視点での振り返りを行う時に考えておきたいのは「視点の違い」です。どうしてその事象が起きたかを考える前に「失敗の原因になった人」探しが始まってしまいやすく、場合によりその人への責任追及が始まってしまうためです。
同じ事象でも、視点が違えば見解が違うのは当然と言えます。そのため、KPT方式に則り特定の人を責めることなく、できるだけ客観的に問題点を見つめ言語化・分析することが重要です。このような振り返りを通じて、トラブルの想定がブラッシュアップされて事前に察知することができるようになり、対策が取れます。
青柳様からも、「siwakeeはクラウドサービス事業ですので、引き続きプロダクトのUIデザインのほか、別途制作いただいた動画や名刺のデザインなどのような各種制作でもお力添えをいただきたいです。また、親会社のグリーンウィローにおいても、Web制作や各種デザイン制作でお力添えをいただきたいと思っています」とノヴィータへの期待をおっしゃっていただき、今回の振り返りはとてもありがたい機会となりました。
今まさに、プロジェクトを抱えていて同じような問題でお困りの方は、ぜひ参考にされてみてください。
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