NOVILOG

株式会社ノヴィータが運営するブログメディアです。メンバーのこと、文化や価値観、ノウハウ、様々な活動などについて発信します。

実践的なディレクション力の磨き方~プロジェクトの振り返り後に読書をやってみた~

ノヴィータ顧問の齋藤です。
普段は会長や社長の経営上のお悩みの整理と伴走や、メンバーとの業務相談などを中心に、リーダークラスのマネジメント研修、NOVILOGのマネジメントなどに携わっています。ノヴィータにおいては、社内の総合的なお悩み相談と課題解決のサポートを担当してきました。

ノヴィータはWeb制作を主力事業のひとつとしており、ディレクションスキルを重要視している会社です。私自身もWeb/ITディレクションを生業としており、経験歴は20年になります。業界の発展・普及とともにWebやITのディレクションに関わるようになり、これまで様々な制作開発の現場を見てきました。

制作の現場においてWebディレクターやプロジェクトマネージャーが必要不可欠という意識は、Web・IT業界に携わる多くの人が持っていると思います。しかしディレクターは人手不足のうえ、スキルを持った人材を育てていこうにも、ノウハウが単純化・言語化しづらく、育成が難しい側面があります。実際それは肌感覚でもわかっていたことですが、ノヴィータ社内でも同じような悩みが聞かれていました。

ディレクションスキル育成の方法を探すなかで、注目したのは自社で運営するWebメディアのリニューアルプロジェクトです。進行中にいくつも課題が見つかっており、振り返りを行うことになっていました。私自身はプロジェクトに参加していませんでしたが、ファシリテーターを買って出て、振り返りの後に指定した本を読んでもらうやり方をとってみました。

ディレクションやプロジェクトマネジメントのスキルを即時に育成するというのは難しいですが、参考になる書籍とあわせて課題の根本に立ち戻ることでその一助になることが今回の取り組みを通してわかりました。
ディレクターのスキルの伸ばし方に悩まれている方はぜひ、参考にしてみてください。

ディレクション力やプロジェクトマネジメント力をどう育成するか

ディレクターやプロジェクトマネージャーの人手不足は、Web/ITディレクションという仕事について20年以上経つ私がずっと感じていることでした。Webの制作・運用、開発には必須の存在であるものの、育成すること自体が難しい職業です。

ディレクターはどのようにすれば育成できるのかと質問・相談されることも多いのですが、一概に「こうすれば成長しますよ」といえる答えもありません。講座を設けてみたり書籍を読んでもらったりしてみても、スキルがすぐに身につくわけではありませんでした。

長年Web/IT業界に関わっている方は、同じように感じている方も多いのではないでしょうか。ディレクターをどのように育てるか悩んでいた時、自社メディアサイトのリニューアルプロジェクトの状況を聞きました。

プロジェクトの振り返りに読書をワンセットにしてみる

その案件は自社メディア「ラシク」のリニューアルプロジェクトでした。
2023年2月、ブランドリニューアルのタイミングでWebサイトもリニューアルを行い、2015年にオープンして以来のターゲットであった「働くママ」からターゲットを拡張。ブランドイメージのリニューアルの他、時代にあった記事カテゴリを新設するなどの変更を行いました。
クライアントとなるラシクは社内のチームで、ディレクションや制作を担当するのも社内のメンバーだったため、私は少し離れたところで案件の進行を見守っていました。

ですがプロジェクト進行時、関係者が多く、各自の視点で進めてしまったことなどから思ったような運びにならず、問題が発生していたようです。満足のいくアウトプットでサイトがリニューアルされましたが、進め方などでは課題感を残した状態になっていました。
そこでそのまま放置したり「誰が悪い」と人のせいにしたりするのではなく、プロジェクトの課題がどこにあってどうすべきだったのか精査し、今後に活かすために振り返りが行われることになりました。

ファシリテーターを買って出たのは、この振り返りがプロジェクト参加者全員の成長に繋がると考えたからです。成長の鍵になるのが、プロジェクトマネジメントの考え方を理解し、それぞれの立場でディレクションに活かすことでした。

振り返りにはKPT方式を用いました。KPT方式とは振り返りのフレームワークの一つで、プロジェクトで起こったことを以下の3つの視点に振り分けて話し合うことです。視点を振り分けることで、建設的な振り返りと話し合いがしやすい効果があります。ノヴィータではこの、KPT形式での振り返りを頻繁に行う文化となっています。
K…Keep 継続すること=良かった点
P…Problem 課題・問題=改善すべき点
T…Try 挑戦すること=具体的な改善策

普段のKPTでは、30分~1時間程度集まって1回で振り返る形式を多くとっていますが、今回はその形式で終わらせず、段階を踏んで参加者にじっくり考えてもらう方法をとりました。今回の段取りは以下です。

  1. 参加者にKP(Keep・Problem)を記載してもらう
  2. ファシリテーター(齋藤)がプロジェクトの進行プロセスごとにKPを切り分け、記載し直す
  3. 振り返り前編を開き、全員で書き出されたKPを読み合わせる
  4. 記載内容のすり合わせが終わったら振り返り前編を終了し、次回開催までにファシリテーターが指定した本を読んできてもらう
  5. 読了後、改めてP(Problem)に紐づくT(Try)をそれぞれ書き出してもらい、振り返り後編で全員で読み合わせて「どうあるべきだったか」の認識をすり合わせる

第3段階のKPの読み合わせでは、P=課題・問題の発生した背景やプロセスといった事実関係を確認し、コメント欄に入力して「実際に何が発生していたのか」について認識をすり合わせしました。全員でその認識を合わせたうえで指定した本を読んでもらうことにより、本で言及されている内容を、直面した課題と重ね合わせやすくしました。
あわせて、第5段階では本の内容をもとにTryのアイデアをそれぞれに書いてきてもらいました。各自のアウトプットの後、お互いのアウトプットを読み合わせることで、本の内容をより深く理解するとともに、今後に活かせるアイデアが出てくるのではという狙いがあったからです。

参加者に読んでもらったのは橋本 将功さん著の『プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本』でした。
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実践したことに体系的知識を組み合わせ、複数人で学ぶ

著者の橋本さんとは以前から仲良くさせていただいており、橋本さんからプロジェクトマネジメントが学べる「プロマネ道場」という講座に参加したこともあります。プロマネ道場では、自分の経験したプロジェクトにおけるトラブルについて、橋本さんに相談ができる場があったのが印象的でした。

普段の環境では、自分が経験したトラブルに対してどう対応すればよかったのか具体的に相談できる場はなかなかありません。ですがプロジェクトマネジメントスキルの育成において、そうした相談の場がないことは問題なのではないかと感じていました。

私がこの仕事を始めた20年ほど前には、まだディレクションやプロジェクトマネジメントに関する良い書籍や講座はありませんでした。私たちのように業界の発展とともに歩んできた人は、こうした学習ではなく、個人それぞれが血のにじむような努力をすることで、スキルやノウハウを身につけるしかありませんでした。

橋本さんもこの本を「プロジェクトマネージャー始めたての、四半世紀前の自分のために書いた」と仰っており、この本を読むこと自体が、私たちのような無理な努力をしなくてもスキルを身につけるチャンスとなります。

そこにプラスして実際のプロジェクトの振り返りを行うことで、具体的な悩みに耳を傾けアドバイスする・される場としても機能させる狙いがありました。
実際にやってみて、参加者それぞれの知識だけでなく書籍の体系的な知識を活用できて、解決策がより導きやすかったようです。また、KPT形式で振り返ることで各自の立場を尊重しつつもお互いを理解する機会にもなり、学習効率が良かったように感じています。

それでも、ディレクションスキルが魔法のように身につくというわけではありませんが、スキルを身に着けられる機会をコツコツ増やしていくことで、ディレクション力やプロジェクトマネジメント力の育成に繋がるのだと思っています。
今回は体系的な知識のインプットとして『プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本』を選びました。この書籍自体も、実際のプロジェクトの振り返りに書籍を併用する方法も有意義だったため、ぜひおすすめしたい1冊です。

「プロジェクトは生き物」なので必ず振り返って次へつなげよう

ノヴィータは過去のビジネスモデルなどを顧みると、比較的小規模のプロジェクトを手掛けていることが多い会社で、プロジェクトマネジメントに必要な細やかなことが属人的になっていたり経験に頼ってしまっていたりすることがありました。プロジェクト規模が小さいからこそ、「なんとか」できてしまっていたことも多かったといえます。

現在はチーム化に加え、手掛けている事業もだんだん大きくなり、自社内での取り組みも横断的になることも増えてきました。それに伴い、プロジェクトマネジメントの重要性が改めて社内でも注目されています。
今回の振り返りの中では、皆それぞれがプロジェクトに本気で取り組んだからこそ意見がぶつかることもありましたが、プロジェクトマネジメントの方法や大切さを学んだ象徴的な事例となりました。

「プロジェクトは生き物」だとよく言われます。そもそもがケースバイケースで、プロジェクトに参加する各人の立場も異なります。立場が違えば感じる悩みもそれぞれです。
悩みは違うからこそプロジェクト全体で振り返り・意見を出し合い・正しい知識のインプットが重要だということを、参加メンバー各人に感じてもらう機会になりました。
私自身も、今回の方法に手応えはあったものの、ベストだと早急に判断することはせず、これからも学びを深めていこうと感じた振り返りでした。自社内のビジネス課題の解決やサービスの向上に繋がる貴重な経験です。

 

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