まえがき
こんにちは。ノヴィータの小山です。
ノヴィータではフロントエンドチームのリーダーをやっています。
いわゆるプレイングマネージャーで、5人ぐらいのフロントエンドエンジニアのチームを見ています。
ほとんど何もない状態からフロントエンドのチームを立ち上げて、3年が経ちました。
なかなか成果が残せなかった1〜2年を経て、この3年目で何とか安定した成果が残せそうになってきつつある…ところです。
今回は、そんな私のチームで起こった、ドラマチックかつ涙なしでは語れない教育と成長のサクセスストーリーについて、淡々と語っていきたいと思います。
成長が見られないメンバーをどうしますか?
どこの組織でもある問題だとは思いますが、
- 成長が見られない、成果が伸びない
- ミスの数が減らない、仕事を任せ切れない
- 本人に改善の意思は見られるが、実際には改善しない
こういったチームのメンバーに対して、マネージャーはどのように接するべきでしょうか。
1〜2年ほど前、私たちのチームもこのような問題に悩まされていました。
一つ一つのミスやトラブルに対して局所的な解決策は打てるものの、それらが積み重なるだけでは根本的な問題が解決しそうにない。そもそも根本的な問題とは?…などなど。
特にマネージャーという立場であれば、「成長が見られないメンバーに対して、どこまで教育コストを払うべきなのか」が気になるところでしょう。
経営目線なら、そこには当然ながら、もうこれ以上は教育コストをかけないという判断もあり得るはずです。
ぶっちゃけ、私たちには、それがわかりませんでした。
判断基準が曖昧で、答えが出せなかったといったほうが正しいでしょうか。
なので、まずはその判断基準を作るところから、一度じっくり腰をすえて取り込んでみることにしたのです。
まずは吐き出し、議論のポイントを見定める
「ぶっちゃけわからない状態」なので、何から始めたかというと、この問題に対して私たちが感じていること、考えていること、その想いなどを全て吐き出すことにしました。
スプレッドシートを作り、各々が好き勝手に書き込み、それをサマリしていきます。
サマリには、おおよそ以下のようなことが書き込まれました。
- 同じミスを何度もすることに対する改善策が思いつかない。
- どの程度の成長速度が妥当なのかわからない。
- どのように本人のモチベーションを維持すれば良いかわからない。
- 払った教育コストを記録していないので、費用対効果を測定することができない。
- いつまで現状を許容すればいいのか、判断基準がない。
だいぶやわらかく書きましたが、実際にはもっと長く・多く、思わず目を背けたくなるような強い表現もある、思いの丈がたくさん書き込まれました。
それらを全て掲載したいのは山々ですが、コンプライアンス違反で私が役を追われてしまいます。
要するに皆、本気(マジ)でした。
これらをサマリしていくなかで、結局のところ私たちは、
今までいくつか解決方法を試してきたが、
・どんな解決方法を試したか部分的にしか記録できていない
・試した解決方法の効果を厳密に検証できていない
・試した解決方法にかかるコストを算出できていない
などが原因で、「妥当な教育コスト」が分からず、判断もできない。
ということを、認識・課題化することができました。
「妥当な教育コストがわからないので、成長が見られないメンバーをどうすべきかが判断できない」ということを言語化できたのです。
解決に向けて走り出した俺を止めることはできない
課題化さえできてしまえば、あとは社内でも全自動型課題解決マシーンと名高い私ですので、解決方法を策定するのに時間はかかりませんでした。
成長が見られないメンバーに対し、妥当な教育コストがどれぐらいなのかを見極めるために、次のようなことを行いました。
- 具体的な教育プランの策定および教育コストの見積り
- 教育プランの実施期間と効果検証プランの策定
- 効果が見られなかった場合の対応方針を協議
「教育プラン」というわかりやすい書き方をしましたが、実際にはそこまで大げさなものではなく、特に改善させたいポイントに的を絞った指導計画のようなものです。
指導計画に従って実施し、効果を測り、何度か繰り返すことで、いわゆるROI(費用対効果)を見極めようとしました。
そうすることで、少なくとも冒頭の「成長が見られないメンバーをどうしたらいいかわからん」という状況を脱することができると考えたのです。
- これだけ教育コストをかけたら改善した。
- これだけ教育コストをかけても改善しなかった。
- だから今後はこのぐらい教育コストを払うべきである。
定量的な会話ができるようになることが、私たちの狙いでした。
教育プランの実施と経過
まずは3ヶ月実施してみて振り返りを行い、修正しつつさらに6ヶ月継続するような教育プランでした。
具体的なプランの内容は割愛しますがポイントとしては、
- まずは本人にブリーフィングを行い、状況およびプランの理解を促す
- ミスを生みにくい業務フローのチェックポイントをなぞっていくスタンプラリー形式
- 一回の業務フローが回る毎に上長によるチェックと評価を行う
- 定量的な評価が行えるような指標が設けられている
- 実施コストが分かるような見積りが設けられている
大体このようなものでしょうか。
はっきり言って指導の内容自体は重視しておらず、大事なのは「定量的な評価ができる」「実施コストが分かる」「それらがログとして残る」ことでした。
繰り返しになりますが、今回の私たちの取り組みは、成長が見られないメンバーを「成長させる」ことが目的ではなく、成長が見られないメンバーに対して「今後どのように対応するか」の指針を得ることが目的だったため、です。
実施した教育プランは概ね予定通りに進み、結果として6ヶ月分の途中で実施を打ち切ることになります。
教育プランの大きな成果
3ヶ月分の教育プランを実施してみた結果として、
- とある業務フローに対して定量的な評価基準を定めることができた
- その評価と教育にかかる実施コストが把握できた
- 実施した内容が全てログに残った
ここまでは想定範囲内でした。
嬉しいことに、教育対象のメンバーに明らかな成長が見られた、業務における改善が見られた、という想定外の大きな成果を得ることができました。
従って、同じ教育プランを実施し続ける必要がなくなってしまったため、教育プランの実施を完了としました。
正直なところ、私たちは3ヶ月分の実施で業務における改善が見られるとまでは期待しておらず、しばらく教育プランを実施していく過程で、改善が見られるタイミングを待つくらいの気持ちでした。
この結果から私たちは、
- 今後、同じように成長が見られないメンバーが出てきたら
- 今回と同様の教育プランを策定して3ヶ月分を回してみる
- (それぐらいまでのコストなら十分に払う価値がある。)
- (逆にそれ以上のコストを払うことになるならば見直し等が必要。)
という指針を得ることができた上に、実施した指導内容が効果的なものだったというボーナスまで手にしたことになりました。
本人としても、実施した指導内容の評価基準が明確であったことが、改善に大きく役立ち、成長につながったということのようです。
ここまでの成果が得られるとは思っていなかった、というのが正直なところです。一兎追うものが二兎を得てしまったということですね。
組織課題を解決していく長い旅路の中で
実はこの記事は、前述の「大きな成果」から1年半〜以上は経ってから書いています。
当時の取り組みを改めて思い起こすと、最も大きな収穫だったのは「こうやって組織(チーム)の課題を解決していくんだな」という勘所の実感と成功体験を得られたことだったと思っています。
様々な組織論が書かれた書籍やコンサルタントのアドバイス等は、あくまでフレームワークときっかけにしか過ぎず、多種多様な人間が様々な業務を行っている全ての組織に当てはまるわけがありません。
最終的には自らが主体的に取り組み、解決していくしかない場面が多いと思います。
そのような経験ができたこと、そこで成果を出せたことが大きな収穫でした。
1年半〜が経ったいま、私たちは更なる成長の過渡期にいます。
当時の教育対象だったメンバーは今、チーム内で最も大きな利益を上げ続けるメンバーへと成長しました。そのきっかけの一つが、この記事で書いた取り組みであったことは間違いないと思います。
まだまだというかマネージャーである限り永遠にこの組織課題を解決する旅は続くのですが、何か大切なものを忘れた気がする・初心に戻りたいという時がきたら、この記事を自分で読み返そうと思います。
お疲れさまでした。
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