多様な働き方が選択できるようになったことによって、ワーケーションが盛んだ。ワーケーションとは、「ワーク」「バケーション」をくっつけた造語で、一般的には旅先でリモートワークを行うこととされている。
今回は、単なるワーケーションではなく、「想像もしないような新しい人との出会いや関係性が構築できてしまった結果、地域の課題解決を目指すことが可能になるワーケーション(「ワーク+コミュニケーション」」)を提案したいと考えている。
バケーションしながらリモートワークできるのは当たり前の今。アクティビティの種類、景色や食事の良さで行き先を決めることに、物足りなさを感じている人にはうってつけだと思う。
もともと僕はノートパソコンとスマホがあれば仕事になるようなタイプで、基本的には場所に縛られることなくどこでも仕事ができる。
日常から離れたところにわざわざ行くのであれば、そこで何ができるのか?ってことが気になる。
そんな時に出会ったのが、兵庫県の北端にある人口1.2万人程度の新温泉町の役場職員の福井さん。この出会いが、この事業を始めたきっかけだった。
うちの町(まち)には何もありません。
東京青山のコーヒーショップでお会いした福井さんはとってもにこやかな田舎の役場の職員さんって感じだった。「温泉天国室 室長」というのが彼の肩書。
温泉天国室って!もうこの時点で心が動いてしまった。
相談事は、「まちに活気を取り戻すことを考えています。それに知恵と力を貸してくれませんか?ただし、お金はありません。資源も他に誇るほどのものはありません」というよくある相談だった。
でも、暗くない。いつもこの手の相談をくれる方は覇気のない頼りない感じの人が多い。しかし、福井さんの持つ雰囲気は不思議なくらい明るい感じだった。それからというもの、福井さんはすごくまめに連絡をくださった。
もともと、新温泉町は湯村と浜坂という名前の町が合併してできた。
僕の記憶では「おじいちゃんが連れて行ってくれる高級な温泉街」っていうものだった。
昭和スタイルのバス旅行がガンガン入って、一泊二日の豪華旅行で儲かった。そして大きくなった温泉街。しかし、今は厳しい状況だ。
実際に行くと体感する「何もない」観光地の現状
誘われて行ってみた新温泉町は、やはり昔の記憶の通りで、高級な宿があって昭和のバブルの香りがしっかりする、料理も会席料理スタイルだった。
何もないと言われたとおりに「娯楽」が何にもない。かつて賑わっていた頃にあったストリップ小屋も飲み屋も土産物屋も無い。夜になっても騒がしい観光客も居ない。
コロナの影響もありどこも同じだろう。アクセスのいいところは別としても、日本中そこかしこにあるアクセスの悪い小さな温泉街なんてこんなもんだ。
しかし、福井さんが連れて行ってくれた新温泉町の観光場所以外の風景は違っていた。
地元の人が生活の基盤としている98℃で湧き上がる泉源。昔からその湯を使って生活をしている。言われてみれば、温泉街であるにも関わらず、普通に民家があり、洗濯物が干してある。整備された観光地とはまったく違う。
メインの観光スポットは荒湯(あらゆ)。あらゆるものを湯がく事のできるまちの調理場。
観光客はここで卵を湯がいて温泉卵にするが、温度が高いので11分で出来上がってしまう。
何もない田舎の山道はロードバイクで走ったらすごくいいトレーニングになるだろう激坂。そもそも、車の通行量も少ないので山好きの自転車乗りにはぴったりだ。そんなことを話しながらどんどん山に登っていくと、いきなり景色が開けた。目に飛び込んできたのは牛!放牧されてて電柵の内側にたくさんいる。牧草を喰む牛を、息遣いが聞こえる距離で見ることのできる上山高原。
かつては賑わっていたのだろう海水浴場にも行った。今は、本当に誰ひとりいない。完全に忘れ去られたような場所にある。湾を見下ろすようにキャンプ場があり、かつて整備されたトイレはまだ現役。
透き通る海に惹きつけられて浜に降りていくと、砂ではなく、まんまるのたくさんの石が敷き詰められていた。波の引き際、玉石が擦れ合うと心地よい音を奏でるシークレットビーチだ。
その他にも、かつての高校だった場所やキャンプ場の跡地、保養所として使われていた巨大な廃墟。こんなところを福井さんに案内してもらった。
いずれの場所にも人がいた痕跡「しか」ない。
そんな新温泉町で暮らしている人たちと話をさせてもらった。楽しそうに談笑している婦人会の集まり、漁業から観光業までやられている事業者さん、町の外れでやっている居酒屋の若い店主。
婦人会でやっていることは、お金儲けが目的ではない。もともと地元で作っていたものを今でも作っている。ただ作るだけだと面白くないからと販売が始まり、ちょっとずつ人が集まってきて、今は廃園になった保育園の跡地を使って商売している。
加工用の設備を追加してみて、それを使ってまた何かを売りたいと考えている。
もっとみんなに食べてもらって話のネタにしてもらったら嬉しい。ただ、そんなに量は作れない。取れた分からしか作れないから、自分たちが食べる分と大事な人に配る分よりも少し多い位の量だ。
当然、流通に乗せてプロモーションをかけてどんどん販売しよう!なんて量ではない。
効率の良い作業方法を提案して、合理的なビジネスに仕上げていくのとは違うのだ。
「作業をするために集まり、作り、販売する。」自体を「楽しむ」というもの。
この「こと」を一緒に楽しめるような仲間がほしい。そんなふうに聞こえた。
ここから僕の挑戦は始まったように思う。
単に観光地に行ってリモートワークをするのとは違う。地域に入っていって、そこでしか出来ない経験をさせてもらい、そのお返しが何らかのカタチでできないか?を考えるのが、僕がやっているワーケーションだ。
その地域へダイブ!して醍醐味を味わう新ワーケーション
各観光地では、リモートワークが可能な環境を整えてワーケーションができることを謳っている。
観光事業者からするとこんな今だから、収益性が下がったとしてもワーケーションで長期滞在してくれるのはありがたい。
「設備がどうだ」とか「何々が楽しめる」とか、すごく魅力的な宣伝文句が並んでいる。
きれいな写真にカッコいい動画。日本中に魅力のあるエリアがたくさんある。
行く側にしてみると、どこに行こうか迷ってしまう。だから、体験者の声を読んだり聞いたりしながら自分の大事な時間をどう使うか考える。
実際に行ってみると分かることだが、長期で滞在するためにはそれなりの設備や環境が必要だ。
毎晩毎晩、懐石を食べるわけにもいかないし、畳の部屋でのパソコン作業は辛い。
自炊とまではいかなくても居酒屋や定食屋、コンビニだって欲しい。
と、まぁそんな話をし始めたら自宅の延長になってしまう。
欲を言うと大きな解像度のモニターにテレカンブース、座りやすいイスに…
待て待て、それじゃない。
ワーケーションできる環境があって、観光資源が豊かで、長期滞在を実現できている地域は既にある。沖縄や北海道がまさにそれだ。ワーケーション先進事例で有名な南紀白浜なんかもそうだ。すでに開発が済んでいて「認知」されている。
他にも、東京や大阪から1時間強で行けてしまうような地域では、すでに多くの長期滞在が可能な設備が揃っている。
後発組が同じことをしても勝ち目はない。だって、既に投資が終わって認知されていて更にこれから磨き上げていこうって段階に来てるわけだから。
そこで僕は考えた。
目指すべきは「お客様扱い」を前提とした観光型のワーケーションではない。ましてや新しく多くのお金をかけて、すでにある長期滞在が可能な地域に勝つための投資でもない。
これまでの観光の延長とは違う「ワーケーション」をやる必要がある。
ときに観光事業者は、集客に困って「ワーケーション」っていう言葉を使っている。都会の人も、利便性をそのままに都会を田舎に持ち込み荒らそうとしているように映る。僕の考えるワーケーションはそんなことじゃなくて、
・それぞれが持っている要素を理解して、必要に応じて補い合うってことができるはず。
・補い合うことをやっていく中で、一緒に向かうべき先が見えるといいね。
一緒になってやるからこそ、単なる観光の延長からコトづくりとなって次元が変わる。
そこを目指したい。僕はワーケーションに行くとき「地方拠点にダイブしに行く」って言っている。その地域に深く潜ってみて、実際にどういった事が起こっているのか自分の目で見て、地域の人と深い関わりをもつという意味だ。 僕はワーケーションに行った先にある「地域の課題」に目を向けている。
地方自治体の人と話していると「うちの町には何もありません」とよく言われる。。どの自治体の人も本当に「何もない」と思ってるんだ。
そこへ僕のような人間が入ると、同じものを見ていても違った見え方がする。そこのそれ以外の他を色々と知っているからこそ何かを見つけられるし、生まれ育った人には見えないものが見えてくることだってある。
だから、リモートワーク出来る人で、地方でのビジネスに前向きな可能性を探している人、自分の采配で動ける人、地域にあった事業規模で何かを考えている人、そんな人たちを集めている。
心が動いたらワークスペースにこもってないで外に出よう!
僕は、観光で訪れてワークスペースでリモート会議をして帰っていくんじゃなくって、その地域に住まう人たちと何かをやりたくってお邪魔しに行く。
ワーケーションをしにきた「お客様」ではなく、そこの地域の人と一緒に何かを考えたり、やったりして関係性を作りたい。そして、そこに何かを残して帰りたい。
それは、僕がそこにまた行きたくなるような何かだ。新しいビジネスの種だったり、趣味の繋がりだったりする。
話は変わるが、地域にある課題っていうのは、表面的なアプローチだと解決できないことが多い。
課題っていう言葉がよく使われるが、課題のレベルではなく問題のレベルだ。利害や気持ちのすれ違いが複雑に絡まり、合理的な解決方法が見いだせないばかりか、長い時間をかけた関係性の構築が必要だったりする。
だから、ワーケーションを企画する前段として、多様な視点と前向きな気持ちで「その地域にどんな資源や課題が眠っているのか?」を発掘するための視察旅行を実施した。それが、ノヴィータが行っているファムトリップだ。地域の状況に合ったワーケーションを模索する一歩として行っている。
ここに、事例を書いているので参考にしてもらいたい。
https://www.novitanet.com/casestudy/case-famtrip.html「兵庫県新温泉町」でモニターツアーを実施、課題解決への取り組み。
ファムトリップでは、地域での食事会や仕事をされている現場の見学、普段の生活や地域としての課題が語られる現場の視察などを用意しており、以下について把握することができる。
食事会や飲み会:プライベートな関係で腹を割って話せるようになる。
仕事の現場:生活の中で多くの部分を占める仕事場を見る。
課題が語られる場:何を課題に感じていて、どんなことをやろうとしてるのか。困った時にどんな風に対応しようとしている人たちなのか。
対して地域側でも、リモートワークできる人を受け入れることで、自分たちの可能性を拡張できることが理解できてくる。
そして面白いことに、僕と同じように地域に入っていこうとする人がいることもわかってくる。これを繰り返すことで、また新しい人との出会いが始まる!
いつもの行動範囲の外に出ることで普段は出会えない人に出会おう。
仕事だけでは生み出されないような人間関係や繋がりを作ろう。
もし、皆さんの中で新しいワーケーション
(地元のコミュニティに入っていくことで、地方課題にコミットしていくワーケーション)
に心が躍るなら、ぜひ参加をおすすめしたい。
実際体験してみると味わえるはずだ。ダイブした地域で「お客様」から「特別扱い」される存在に変わったり、新しい仲間と出会ったり、地域課題を解決させたりする高揚感を。
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