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軸があればキャリアは広がる。ノヴィータ×東京学芸大学 キャリアイベント「みちしるべ」第4回

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株式会社ノヴィータでは、東京学芸大学とキャリアに関する共同研究を行っています。その中のひとつとして、「みちしるべ」という東京学芸大学の在校生・卒業生の交流イベントを行っており、毎回在校生インタビュアーが卒業生ゲストに話を聞いています。2020年4月に初回を開催し、今回で4回目。

今回は、動画ではなく記事のみで内容をお届けします。文部科学省 研究振興局 振興企画課 課長補佐の吉居真吾さんにお話を伺いました。
インタビュアーの学生は、徳田美妃さん(B類音楽専攻、3年生)、下田紗矢さん(A類学校教育専修、4年生)、黒澤陽さん(A類英語専修、4年生)です。

 

自分だけ取り残された気がして、皆すごいなと感じていた

-吉居さんは文部科学省に入った当初から、大学とか高等研究機関に関わりたいと思っていたんですか?

吉居:自分の中に大学や研究というキーワードはあったんですけど、私の興味は書道など芸術、文化や文化財だったので、当初文化庁に行きたいと思っていました。学術研究の部署に配属されて、色々先輩から話を聞いたり、自分でも関係業務を少しずつ学んだりして、今に至るという感じですね。文化庁に行きたかったという気持ちはありますけど、近いところにいますし、学術研究の面白さも知ったので、それはそれで良いかなと今は思います。みなさん、学生生活も後半になって、就職もリアルな話ですよね。

-周りも教員か就職かという分かれ道を決断しているところなので、とても進路については悩んでいます。

吉居:そうですよね。私は大学院に行きましたけど、周りの同級生は自分の出身県に帰って地元の教員になるとか、実家の仕事を継ぐとか、色んな人がいました。同じアパートに住んで学芸大学に通うという生活自体は実質変わらないから、皆が試験を受けるなどして羽ばたいていって、自分だけ取り残されているような気がして、皆すごいなと感じていました。大学院を修了して文部科学省(金沢大学)に採用される前の三年くらいは高校の非常勤講師をしていました。結果的になんとか採用してもらえたからよかったけど、自分のことは落ちこぼれだとずっと思っていましたね。

 

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ゲスト 文部科学省 吉居真吾さん

 

-文部科学省で働かれている方の中で、音楽や美術、書道などの芸術関係を経験されていた方というのはいらっしゃるんですか?

吉居:大学の専門や専攻としてはそんなに多くはないと思いますがいらっしゃいます。何年か前に、学芸大学の音楽を専攻していた方がいらっしゃいましたね。趣味も含めれば音楽をやっていらっしゃる方は少なくないと思います。書道の方も、学生時代に書道部に入っていたとか、好きで続けているという方はいらっしゃいます。

-学芸大学の音楽科の先輩がそういうところに行っているのはお話を伺ったことがなかったので、正直驚きました。文部科学省で働かれる中で、趣味との両立ではないですが、書道の時間は結構取れるんですか?

吉居:平日はなかなかできないですね。「今度の作品、どういう風にまとめようかな」など通勤中に考えたりしますが、やはり仕事をしている時には仕事の頭になるので。なので金曜日の夜に家に帰ると、「あぁ土日だな、じゃあ書道を」という風に切り替えます。やはり社会にでて、働きながら自分の好きなことを続けていくのは結構大変です。好きで続けていることだから苦には思わないけど、どうしても自分の空いている時間にやることになるので。

やりたいことを生涯続けるというのはとても大変なことだと思いました。

吉居:書道は基本的に個人の取組みですが、一人で続けるのはなかなか難しいと感じています。先生や色々な方に教えていただいたり、仲間とああだこうだ言いながらやったり、そういうコミュニケーションも書道の楽しみの一つだと思います。自分の作品を批評してもらったり、人の作品にコメントすることもあります。そういうことを長く続けられているのは幸せだと思います。

-書道で人と繋がるではないですが、書道がそういうきっかけにもなっているということなんですね。私自身、子供と関わる中で、やりたいことがないお子さんがとても多いと感じるのですが、吉居さんはどのようにやりたいことを探していますか?

吉居:私は今でも、やりたいことの中心は書道なんですが、他にも興味を持つことはたくさんあります。それぞれだとは思いますが、おそらく何かを見つけて掴みにいくというより、自分が今立っているところをもう一度見回してみて、やり残したことや、分かっているが手つかずのまま来てしまったことから始めてみるのは一つの方法かなと思います。あとはその周りに繋がっている世界がたくさんあると思います。なにか基軸になるようなものができると、あとは繋がっていくと思うんです。

 

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色々なことに関心がある、けど時間は限られる

-私は元々、理系と音楽だったり、理系と美術などに興味があります。それこそ書道にも、歴史や哲学などあると思うのですが、吉居さんが考える書道と結びつくと面白いと思う領域はありますか?

吉居:仕事で天文や物理、歴史など、様々な研究分野の先生方とお話しするのはどこかで私の肥やしになっていると思います。だけど意図的に何かの分野と書道をくっつけるということは私はあまり考えていないです。私は書道をもっと深く掘り下げていきたいですね。昔からの書の銘品を学ぶとか、書物を読むとか、そうやって専門的に学んで得たものが、意外と他の分野でも共通しているということもあると思います。

-純粋に書道を楽しむではないですが、書道の奥深さを生涯かけて深めていきたいという感じなんですね。

吉居:そうですね。先程も申し上げた通り、色々なことに関心があるし、書道自体も様々な分野に繋がっているから、他の分野も面白そうだなと思って行くこともありますが、どんどん広がると、どうしてもおざなりになってしまう部分が多くなる。色々なことには興味があるんだけど、一番やりたいことは一番やりたいこととして全うしたい。そんなところでしょうか。やはりどうしても時間は限られているから。例えば金曜日の夜によく思うんですが、土曜と日曜で48時間あって、そのなかで何をするかというのは考えますね。寝なきゃいけないし、ご飯も食べて、例えば中学三年生の娘のことだとか、家族とどこかに出かけるとか、そんな予定を引き算した残りの時間をどう過ごすかということは考えます。次の週末が来るのは一週間後ですから。

-みちしるべに携わる上で、インタビューする方の人生に触れたいなと思うのですが、吉居さんにとって家庭とはどういうものですか?心の支えとか、色々あると思うんですが、そういう話を伺いたいなと思いました。

 

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インタビュアー 黒澤陽さん(A類英語専修、4年生)

 

吉居:一般的に言われるように、就職して、結婚して、子供が生まれて…というような生活には憧れていました。ただ、私は公務員になったのが遅かったので、その間に大学時代の同級生や先輩は就職をはじめ、ご結婚されたり、出産されたり、そういう風に人生を歩んでいらっしゃる一方、私は仕事もまだはっきりしていなくて、頑張らなければいけないなという気持ちはありました。そういう意味からも自分も家庭を持ちたいなという気持ちがありました。

-ご家族と関わる上で、大切にしている時間や、娘さんのことなど、土日など少ない貴重な時間で意識されていることはあるんですか?

吉居:食事を一緒にとることかな。そのときに少しでも話すようにしています。皆さんは中学生くらいの時にどうだったか分かりませんが、娘も小さい頃のようにはだんだん話さなくなってきて、父親としては少し寂しく感じることもありますが、一人の人の成長としては普通のことだから、それはそれでいいのかなとも思います。私も中学生の頃は散々親に反抗しましたし、それが巡り巡って自分にきたんだと思います(笑)

 

動いてみたら、やりたいことの輪郭が見えた

-ここからは私達学生の今の悩みも重ねて質問させていただきたいと思います。書道という自分のやりたいこと、でも他に仕事をしなければいけないという時の折り合いの付け方や決断のきっかけがあればお伺いしたいです。

吉居:私は大学院に進んだのですが、修論の勉強に追われていたこともあり、修了時もはっきりした就職のイメージはありませんでした。書道に関係する仕事はあまりないし、先輩方の多くが皆さん都内の高校の非常勤講師をされていたので、「自分もそういう風になるのかな」くらいの気持ちでした。修了後、紹介頂いた高校の講師をやりましたが、教壇に立ってみて、これをずっと自分の仕事にしていくのは難しいと思いました。それはやってみてすぐ分かりましたけど、書道が上手いことと書道を生徒に教えるのが上手いことは全然別のことでした。私は自分が好きで書いていただけでできるような気になっていたんです。やはり生身の生徒を前にして、如何に書道を教え、書道を通じて文化を大切にする心、あるいは美しいものを見る気持ちや心を育むということは、色んな面で理解できていませんでした。では他に何をやるかということで、研究者という道も考えましたが、枠が少なく、民間企業も受けましたが、受ければ受けるほど「ここではない」とも思いました。私がやりたいのは芸術、文化、大学、研究あたりだと、やっとそこで段々と輪郭が見えてきたという感じです。

 

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吉居:大学時代の仲間に事務職の公務員試験を受ける友達がいて、そんな道もあるのかと思い、国家公務員試験のことを調べ始めました。昔の区分で言えば国家公務員Ⅰ種試験とⅡ種試験があって、Ⅰ種試験は今でいう総合職の採用試験、Ⅱ種試験は一般職の採用試験で、省庁の直接採用の他に国立大学等の事務職員等を採用する試験であることなど、現在の試験区分とは異なりますが、様々な試験があるとわかりました。試験勉強は、自分があまり勉強してこなかった政治・行政分野や、法律分野が多かったので、基礎から大変でしたが、でももうこれしかないと思い勉強しました。…私の方からお聞きしますが、皆さんは文部科学省にどんなイメージを抱かれていますか?

-学習指導要領や教育に関することをやっているイメージです。ホームページは毎日チェックしています。

-NPOの先輩が文部科学省で働かれていて、やりがいを感じているという話をよく聞くものの、働く時間と対価が見合っていないという生の声も伺っていました。部署にもよるとは思うのですが、土日も働くような。私はどちらかというと生涯ピアノや音楽を楽しんでいたいと思っていたので、働き方には大きな軸を持っていたんですが、吉居さんのお話を聞いて、そういうわけでもないんだなと思いました。しかし実際はいかがですか?

吉居:夜遅くまで働くこともありますが、流石に毎日ではないですから。30代の頃はたまに土日に資料やメールの整理をしていたこともあります。ですが、少なくともこの一年間は土日に出勤したことは一度もないですね。働き方自体も改善され、どんどん変わっています。例えば紙の資料を無くしてタブレットで会議をするとか、ミーティングはオンラインで行うとか。紙の資料が無ければ、印刷しセットする作業もなくなります。夜中まで働くイメージが強いかもしれませんが、仕事の効率化と共にワークライフバランスに関する意識も大分変わってきたように思います。

-私の中で国家公務員は難しいイメージが先行していて、選択肢としてなかったんですけど。私も元々文化庁に興味がありまして、芸術全般が好きで、今頑張って学芸員の課程を取っているということもありまして。今のお話を伺っていると一年間では難しいかなと思いつつも、もっと調べてみたいなと思うきっかけになりました。

吉居:ぜひ選択肢の一つに。

-試験に三回チャレンジしたという強いモチベーションはどのように保っていたのでしょうか?

吉居:半分はもうこれしかないという後戻りできない状況ですね。あともう半分は、今から思えば独りよがりな考えでしたが、行政の中に芸術の作り手だった人、作家としての気持ちが分かる人ってあまりいないのではないかと思い、そういう人間がいてもいいのではないかと。自分が現場の声を行政機関に届けるではないですが、そういう立場に自分がなるんだ、なってみたい、そういう気持ちはありましたね。

 

専攻よりも「今」。何をしっかりやっているか

-私は一時期文部科学省に興味を持っていたこともあって、色々と文部科学省を調べていた時期がありました。試験で専攻を選んで受験するというシステムを見て、その専攻に芸術がなかったのですが、吉居さんは専攻をどう選ばれたんですか?政治経済や工学系など、色々な選択肢があって、その中に確か芸術がなかったんです。

吉居:私が受験したのは、当時の国家公務員Ⅱ種試験で最も採用者の枠が大きい行政区分です。行政の他にも色々な分野がありますけど、それらは大学などで専門の勉強をされてきた方や経験のある方が多いと思いますし、採用数が少ないので、私は一番枠の大きいところを希望して、「大学を出てから今は高校で非常勤講師をしている者です」という風に面接を受けました。

 

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-行政の枠を受けるに当たり、芸術系をやっていた人でも、しっかりと勉強をすれば可能性はあるんですか?

吉居大学でなにをやっていたかということは履歴書上見られますけど、それよりも今しっかりやっているということが大事と思います。組織に入ってきちんと公務員として仕事をしていけるか、というところが一番大事で、そこが大丈夫だったら大学の専攻は関係ないですよ。

-そこを危惧して諦めてしまっていたところがあったので、とても参考になりました。ありがとうございました。

吉居:それは私が採用されていますから大丈夫です(笑)

-仕事の話に戻ってしまうんですが…日本は教育にお金をかけないと世論的にもよく言われていると思うんですが、この研究にお金をかける、などはどのように判断されているんですか?

吉居:研究業務において、すごく重要で難しい部分の話です。研究者の先生方は御自分が取り組みたい研究がそれぞれおありですが、残念ながら全部は採択できません。ですので、ピアレビューと言って、同じ分野の他の先生から見てその研究はどう映るかということを伺います。この研究が世界でどういう位置付けにあるのか、海外と競争しているならば、海外では現在どういう状況なのか、その研究の見通しや実現性、将来的な可能性など、その研究はじめ周辺の状況を伺って判断するというのは一つの方法です。

-私自身も院進学を目指していて、研究と音楽と芸術に漠然と興味があって。省庁のお仕事では研究領域に関わることは知っていたんですが、今まで全く考えていなかったので選択肢としてあるんだなと。研究など多部領域に興味がありまして、ただそれを民間企業で就活すると、なかなか芸術と直接結びつかなくても横断的に関われる職業があまりにも少なくて、それがなおかつ教育となると更に幅が狭く、とても悩んでいたので、本日のお話がとても参考になりました。

 

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インタビュアー 下田紗矢さん(A類学校教育専修、4年生)

 

面倒で後回しにしていることに目を向ける

-吉居さんの仕事でも仕事以外のことでも、今後の展望についてお聞きしたいです。

吉居:今後の展望というと大げさですが、自分に今与えられている仕事を国家公務員として果たしていく。できる範囲で書道をやっていく、そういった気持ちがある一方、書道が好きだから、もっと時間をかけてやりたいという気持ちもあります。多くはないですが周りの仲間には、改めて大学や大学院に入って勉強をしている方もいて、「思い切ってやっているな」と思うことはあります。

-長い人生を歩んできた中で、大切な言葉はありますか?

吉居:武者小路実篤の言葉で、「君は君、我は我なり、されど仲よき」という言葉があります。私なりの解釈ですが、あなたはあなた、私は私、お互い個人として自己を持った上で理解し仲がいい、という意味かと思っています。武者小路実篤はかぼちゃやじゃがいもなど野菜の絵をよく描かれます。かぼちゃはかぼちゃ、じゃがいもはじゃがいもですけど、それらが集まっていて仲がいい、という。そういうそれぞれ自立した上でお互い認め合って仲がいいというのは良いなと思います。そうありたいなと思いますね。

-私は多様性を認め合う教育にとても興味があって、日本人学校で国際理解を促したりする勉強をしているんですが、今の言葉がとても響きました。最後に東京学芸大学に向けて、メッセージをいただいてもよろしいでしょうか?

 

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インタビュアー 徳田美妃さん(B類音楽専攻、3年生)

 

吉居:私もそうでしたが、学生時代って結構忙しいと思います。毎日の授業はもちろん、その他のことも。その皆さんの今の生活はご自身の努力や判断、選択、あるいはご家族はじめ理解してくださる周りの方がいて、今の環境があると思います。その中にいるわけですから、自分がしてきた努力や判断、周りの方が支えてくれているということをもう一度考えて、自分が選んだことをもう一度見つめて、やるべきことをちゃんとやる。あと、憧れるものってたくさんあると思いますが、もっと足元にある、分かっているが面倒で後回しにしていることや、やらなきゃいけないと分かっているけど勉強していないんだよな、ということをしっかりやるということかと思います。誰でも一つや二つありますよね。そうすることは頑張って学芸大学に入った自分自身、ご家族など自分を支えてくれている人への感謝でもあるし、見直して一生懸命頑張るということが、自然と将来にも結びつくと思います。私もやっている時は辛いこともあったけど、でもやっていたからなんとか掴めたわけで、そういう自分で分かっているやらなければいけないことをしっかりやるべきかと思います。そうしたらきっと道は拓けると思いますので、ぜひ頑張ってください。

-とても刺さりました。頑張ります。本日はとても貴重なお話をしていただき、ありがとうございました。

吉居:ありがとうございました。ぜひ頑張ってくださいね。

 

教育支援職の知識を活用できる場面は、たくさんある

みちしるべでは教員や企業人など様々な学芸大学卒業生ゲストと、在校生のインタビュアーに参加してもらっています。ぜひ、これまでのみちしるべの内容もご覧いただければうれしいです。在校生の方には、教育支援職の知識が民間企業やその他で活きる事例をたくさん提示しており、今後のキャリアをはじめとして選択肢の幅が広がるかと思っています。また、学芸大学関係者の方ではなくとも、先生や教育のイメージが変わり、いい意味で裏切られ、「教育っておもしろい、奥深い」と思えるコンテンツになっています。

 

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